ガラス作家/大家具子
宙吹きガラスとの出会い
神戸市で生まれ育った大家さんがガラス作品を作りはじめたのは、高校時代、サンドブラストに出会ったことがきっかけ。サンドブラストとは、ガラス器の表面に砂を吹きつけ、絵や文字を描く手法。初めて展示会に出した自分の作品を見た大家さんは、既製の器に模様を付けるだけでなく、一から器を造形したいと感じたという。そこでガラス工芸を学べる大学に進学を決めた。出会ったのが宙吹きガラスという手法。高温で溶かしたガラスを吹き竿に巻き取り、息を吹き込む。型を用いずに文字通り宙空で、息と手で自在に形を作る。
ガラス制作から見えてくる自分
固形から液体へ生き物のように姿を変えるガラスに、大家さんはすぐ夢中になった。その日のその温度で、その瞬間に吹き込む自分の息が、作品をただひとつの美しい形へと変化させる。自分が意図して作るというより、ガラスがなりたい形に手を添えるような意識だという。その方が美しいものになるという、確信のようなものがある。同時に大家さんは、ガラスという素材から、例えば「柔らかさと激しさ」というような、両極の性質を感じていた。そのつかみ所のなさと不思議さに翻弄されながら作品作りを重ねるうち、大家さんはふと、ガラスの性質だと思っていたそれらの印象が、実は自分自身の感情を投影したものだと気づいた。明るさや寂しさ、焦りや落ち着きも、気づかぬうちに作品にあらわれる。息を吹き込み、一瞬の判断で作っていくものだからなのかもしれない。制作はガラスとの対話であると同時に、自分との対話でもあるといえる。気は抜けないが、こんなに面白いことはない。
生活に愛着をもつこと
できた器は、展示会やお店で、使い手と出会う。芸術作品として制作をしているのではないという大家さんにとって、器が誰かの手に渡ることは、ひとつの大きな区切りだという。ただ飾っておくのでなく、日常で使ってほしい。「ガラス器はレンジにも食器洗い機にもかけられない。割れないように気も遣う。それは裏を返せば、ものを大切にするということ」と大家さん。「例えばシーツを柔らかいものに替える。玄関に風を通し、花を飾る。そんな些細な変化で、日常をかけがえのない愛しい日々ととらえ直すことができます。生活の中のガラス器も、そんな役割を担っていると思う」。
神戸なら元町の「Glass art Shopトアデコ」、芦屋川の「うつわクウ」で彼女の器に出会える。光を受けた雫のようなガラスは、周りの世界を映し込んでいる。それは自然の美しさであり、光の美しさであり、世界の美しさのように思える。手に取り、ひととき丁寧に暮らしてみたい。
人の心をあたたかくさせる作品作りが魅力の大家さん。神戸と東京を中心に活動中.
芦屋川の「うつわクウ」
元町の「Glass art Shopトアデコ」
(時期により扱いのない場合もあるようです。)