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写真家/佐藤昌也

カメラとの出会い、映画との出会い

初めて自分のカメラを持ったのは小4のとき。近所の港に大きな帆船が来るというニュースを聞いたのがきっかけである。子ども心に一大イベントを写真に納めたいと思い立ち、お小遣いを貯めて小さなコンパクトカメラを買った。劇場の多い街で沢山の映画を観て育った佐藤さんは、その後、映画制作を志すようになった。特に、自然な演技と環境・手法で撮影され、人間がありのままに描かれる『ヌーヴェルバーグ』というジャンルのフランス映画に強く惹かれた。自ら脚本を書き、演出・演技・撮影・編集も手がけ「イメージした世界を映像で表現する」ことに没頭した大学時代は、その後の佐藤さんの方向感覚に大きな影響を与えたようだ。

渡英、写真家になるまで、それから

大学卒業後、商業カメラマンのアシスタントになり、忙しい日々が始まった。カタログや雑誌に載る商品撮影の助手として忙しく働く中で、どこか周りとの価値観のズレや息苦しさを感じていた。24歳のとき、阪神淡路大震災に遭遇。この体験が立ち止まって人生を見つめ直すきっかけとなり、今まで行ったことのない外国に行って暮らしてみようと決めた。当時を振り返り「何かを探すようにイギリスに渡ったけれど、本当にすることがなかったので、街角や公園で写真を撮って、ときどき出会った人に見てもらっていた」という佐藤さん。明確な目標があったわけではなかったが、そこには写真家としての一歩を踏み出す大きな出会いがあった。写真を目にした近所に住む大学教授に認められ、ロンドン・カレッジ・オブ・プリンティングという名門校で本格的に写真を学ぶことになったのである。
斬新でストーリーを感じさせる佐藤さんの写真は数々のコンクールで入賞を果たし、卒業後はファッション業界でモデル撮影を手がけるようになった。どんなに忙しくてもイメージを作り込み、納得のいく写真を撮ろうとする一方、どこかでファッションの仕事にはない「何か」を求める心が芽生えていた。転機が訪れたのは、雑誌の仕事で一人のミュージシャンを撮影したときだった。彼の表情、動き、雰囲気のすべてから個性がはっきりと現れていたので、ファッション誌のように作り込むことは考えず、そのままの彼を生かすように撮影をした。その写真は高い評価を受け、イギリスでBIPPの賞をとった。

カメラマンではなく、写真家

佐藤さんは自分を「カメラマンではなく写真家だ」と表現する。理由は「カメラマンは機材や撮影技術にこだわるが、自分は機材への関心は薄く、写真そのものに興味があるから」。技術も道具も役に立つけれど、一番大切なのは「力のある写真が撮れるかどうか」だと語る。昨年はじめた写真教室でも、技術は気にせず、まずは写真を撮ってみようと勧めている。撮る楽しさを知り、表現したい世界が出てくれば必要なことは後から学んで行けばいい、というスタンスだ。それは佐藤さんからの「写真を通して自分の目で世界を眺め、自分らしく生きてみようよ」というメッセージなのかもしれない。

佐藤昌也さん
元町駅西口から100mほど北へ上がると見えてくる「october studios」。
オーナーで写真家の佐藤さんは、イギリスの大学で写真を学び、
ロンドンで写真家として13年活動後、神戸にスタジオを構える。
定評のあるモデル撮影、企業の広告写真等の他、
自然なリラックスした雰囲気で撮影される家族写真
「ファミリー・ポートレート」が人気を呼んでいる。

月に一度カメラ教室も。
http://oct10ber.com/


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