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自転車職人/日下周一

VIVALO=VIVA+VELO=自転車万歳!

洋服に既製品とオーダーメイドがあるように、自転車にもオーダーメイドがある。体型や用途にあわせて作られた自転車に乗ると、その乗り心地の快適さに驚くという。長年、多くのプロ競輪選手から慕われ、どんな困難な注文にも応じてきた自転車フレーム職人(フレームビルダー)、日下周一さんにお話を伺った。ブランド名の「VIVALO」はイタリア語のVIVA(万歳)とフランス語のVELO(自転車)を組み合わせた造語。多くの人に「自転車・万歳!」という感覚を味わってほしい、という気持ちが込められている。「自分の身体に合ったものに乗ってみてごらん。全然違うよ、楽しいよ〜!」無邪気な笑顔で語る日下さん。世界に数々の自転車メーカーはあっても「乗る人の気持ちに沿う自転車」を一から作ってくれるフレーム職人は、とても希少な存在である。

「何とかしましょう」からはじまるものづくり

フレームとは自転車の車輪、ハンドル、サドルをつなぐ、パイプを組み合わせた自転車の中心部分のこと。材質、寸法、角度のわずかな違いで、コーナリングの良し悪し、出せるスピードなどが大きく異なってくる。オーダーメイド自転車を作り始めて37年の日下さんだが「今までに同じ自転車は一台もない」というから驚きである。どんな注文にも「できない」とだけは言いたくないので、つい「何とかしましょう」と答えてしまうのだそうだ。「毎回違う自転車を作るなんて大変ですね、とよく言われるが、ものを作るのは苦労ではない。難しければ難しいほど、やりがいを感じる」と言い切る。

ゼロから始めたオーダーメイド

幼い頃から手先が器用で、ものづくりが好きだった日下さんは、工業高校で機械の扱いを学んだ。その後自転車メーカーで既製品の生産に携わり、15年目にオーダーメイド部門立ち上げのリーダーとして抜擢された。工場での既製品生産とは全く違う、手作業で乗り手の顔が見える自転車づくりの始まりだった。競輪場に足を運んでは注文者の走りを観察し、フレームの形を研究する日々が続く。弾き出した寸法をいかに精密にカット・溶接するかも腕の見せ所で、正確に効率良く作業するための機械を自ら考案し、夜も昼もなく働いた。5年後に独立し、VIVALOを創立。日下さんの作る自転車は数々の選手をレース優勝に導き、またたく間に大評判となった。

自転車の楽しさを伝え続ける

プロの世界を引退後も、日下さんのつくる自転車の評判はファンの間で伝説のようになっていた。その技術に惚れ込んだ神戸市の「コンフォートスペース」が経営面を引き継ぎ、日下さんが制作に集中できる環境を用意した。VIVALOの自転車の特長は二つあり「1、ペダルにかける小さな力を最大限に活かすデザイン 2、寸分の狂い無くピタリと組み立てられる精度の良さ」だという。「こういう風に乗りたい、とはっきり言ってくれたら、それに応えるものを作ります。ひきだしは、いっぱいありますからね」。頼もしい一言である。


自転車職人/日下周一さん
オリジナル自転車フレームひとすじ50年の日下さん。
長年、プロ競輪選手用の自転車を手がけ、
現在は一般用ユーザー向けに製造を続ける。

日下さんの自転車が注文できる
カフェ+サイクルショップ「コンフォートスペース」
ホームページ:http://www.comfort-space.jp/