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カレー職人/岡本美代子

神戸牛がほろりととろける極上のビーフカレー

もとは神戸の人気洋食屋「グリル味善」の隠れメニューであり、ラッキーな常連さんだけが食していた。美味しさが話題を呼び、「食べたい!」という声が多くなり、カレー専門店「CURRY 味善 MIZEN」の出店に至った。

店舗は、花隈公園の向かいに、隠れ家のように佇む。京都の路地裏にある町家のような店構え。ジャズが流れ、落ち着いた雰囲気の中でカレーを味わえる。「神戸らしくないお店にしようと思ったの」と笑う岡本さんも、きりりとした和服姿。

ルウは、タマネギ、トマト、バナナ、ココナッツなどの食材をみじん切りにして炊き込む。混ぜながら一昼夜寝かせ、とろ火で5日間にも及ぶ煮込み作業に入る。厨房のルウ仕込み専用コンロには、火の当たりを長時間加減し続けるために開発された、オリジナルの穴開き鉄板が敷かれてある。
こうして出来た極上のルウを、注文を受けてからミルクでのばす。ほろほろと溶けるように煮込まれた神戸牛のブリスケ(肩バラ肉)がどっしり供された特製ビーフカレー。とろける牛肉とカレーが混ざり合う、至福のひとときである。ビーフシチューを彷彿とさせるような奥深い味わい、けれど、達人のコメントは至ってシンプル。「秘訣は、手間を惜しまないこと。それだけです。」

製法は全部教えます

製法を教えて!というお客さんもときどきいるそうだ。岡本さんは、「全部教えます。けれど、時間をかけて言われた通りにやっても、この味は作れなかった、と言われるんです。」と言う。なぜでしょうか、と問うと「例えば、時期に寄って入荷してくる玉葱のコンディションが違ったり、気候が違ったりします。塩加減や火加減も日々様子を見ながら調節するものです。それは口では伝えきれず、長年の勘としか言いようがないのです。」
これこそが「味善カレー」をひたむきに作り続けて来た岡本さんの、職人技なのである。
このカレーを味わいたくて、遠方からやってくる人は非常に多い。味善のカレーづくりは、たいへん手間のかかる、地味な作業だが、美味しいと感動して、喜んでもらえることが、明日への活力につながる、と岡本さんは話してくれた。

岡本美代子さん
花隈公園の東向かいに隠れ家のように佇む
カレー専門店「味善」店主。


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