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ボードゲーム職人/高橋勝巳

コンピューターゲームは接待ゴルフ?

アナログゲームをこよなく愛し、世界中から集めた1200種類以上のコレクションを紹介しながら、その魅力を広めている高橋勝巳さんにお話を伺った。開口一番「勝ちやすく作られたコンピューターゲームは接待ゴルフのようなものです」と高橋さん。例えば、サイコロを振って1の出る確率は6分の1なのに、コンピューターではプログラムひとつでその確率が高められる。「自分は強いんだ」と勘違いさせるようにできていることも多いとか。その点アナログゲームでは、運にも左右されるし、頭脳をフル回転させても、強い人には負ける。高橋さんは子ども相手でも不必要な手加減はしない。「悔しい思いをすれば、どうしたら勝てるか、たくさん考える。泣いた子は強くなるんです。」ゲームを通して子どもと接する高橋さんの信念を感じる。

駆け引き~カタン世界大会にて

アナログゲームの面白さは多様で、どれもユニーク。例えば高橋さんが2004年の世界大会で日本人初の3位という快挙を成し遂げた「カタン」というゲームは、サイコロで出た目に従い資産を増やし、自分の領土を発展させ、得点を競うというもの。相手の土地の収穫を妨害したり、欲しい物を手に入れるため交渉したりと、コミュニケーション能力が不可欠。そこで初の世界大会に臨むとき、高橋さんは考えた。「親しくなった相手には妨害などしづらいもの。逆に英語が苦手だからといって黙っていると、気軽に攻撃の的にされてしまうんです。そこで初対面の外国人プレイヤーに『必勝』など縁起のいい漢字を書いた扇子をプレゼントし、試合前に交流をはかることに決めた」。これが功を奏し、思い通り和やかに試合を運ぶことができた。そう、駆け引きは旅支度の時点から始まっていたのだ。穏やかな笑みのむこうに、高橋さんの強さの理由を垣間見るエピソードだ。

子どもの頭脳、大人の頭脳

頭脳を使ったり心理戦を楽しんだりのゲームもいいが、子どものほうが圧倒的に強い、単純さが特徴のゲームもあると高橋さんが紹介してくれたのが「Knapp daneben(惜しい!)」。カードをめくり、色と絵から瞬時に判断して、正しいコマをいち早く取るゲーム。簡単そうだが、ものごとを理屈で捉えてしまう大人には案外難しい。歓声が上がったり、ゲラゲラ笑ってしまったりと、盛り上がる事間違いなし。感覚や瞬発力を競うこのようなゲームでウォーミングアップしてから徐々に複雑なゲームに進んでいくのも良いだろう。
デジタルばかりの世の中で、木やカードなどに直に触れ、目の前の人と直接話をして遊べるアナログゲーム。この充実した時間の過ごし方をぜひ体験してほしい。

ボードゲーム職人/高橋勝巳さん
世界中のボードゲームを1,200種類以上コレクションしている高橋さん。
その面白さと魅力を普及している。「カタン」世界大会3位。